日本語上級者のための日本文學珠玉の小品集
2min2011 JAN 21
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耳無芳一の話 THE STORY OF MIMI-NASHI-HOICHI 小泉八雲 Lafcadio Hearn 戸川明三訳  日の出前に住職は帰って來た。急いですぐに裏の縁側の処へ行くと、何んだかねばねばしたものを踏みつけて滑り、そして慄然として聲をあげた――それは提燈の光りで、そのねばねばしたものの血であった事を見たからである。しかし、芳一は入禪の姿勢でそこに坐っているのを住職は認めた――傷からはなお血をだらだら流して。 『可哀そうに芳一!』と驚いた住職は聲を立てた――『これはどうした事か……お前、怪我をしたのか』……  住職の聲を聞いて盲人は安心した。芳一は急に泣き出した。そして、涙ながらにその夜の事件を物語った。『可哀そうに、可哀そうに芳一!』と住職は叫んだ ――『みな私の手落ちだ!――酷い私の手落ちだ!……お前の身體中くまなく経文を書いたに――耳だけが殘っていた! そこへ経文を書く事は納所に任したのだ。ところで納所が相違なくそれを書いたか、それを確かめておかなかったのは、じゅうじゅう私が悪るかった!……いや、どうもそれはもう致し方のない事だ ――出來るだけ早く、その傷を治すより仕方がない……芳一、まア喜べ!――危険は今ま...

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